兼ねてから藻類の可能性は着目されながらも産業化までにはいたりませんでした。
私たちは、藻類が社会インフラとして浸透することで「消費」型社会から「循環・共生」型社会への転換が実現できると強く信じています。そのためにマーケットイン型の「藻類プラットフォーム」という事業を確立することは、日本のみならず、世界的に大変意義のあることです。
課題先進国である日本から「循環・共生」型社会を創る研究開発の力を世界に届けていきます。
栄養学や医学の発展により世界的に人類の寿命が伸びているなか、我が国では人生100年時代に突入し、同時に生活習慣病の増加なども社会問題となってきています。さらに、高度情報化社会となり、心身ともにストレスを抱える社会となっています。これらを解決するためには、一人一人が自身の健康に注意しながら、健康をコントロールできる、「セルフメディケーション」を実現することが重要です。
カロテノイド類に代表される機能性物質を産生する藻類は、これらの社会課題をサステナブルな方法で解決し、健康で活動的な社会を実現することが可能です。
世界的な人口増加に加えて、所得増加による食の嗜好変化により動物性タンパクの需要成長が著しくなっています。一方でそれら動物性タンパクの供給を担う畜水産業に必要な飼料原料たる穀物類の供給余力が限定的であるだけでなく、農業が必要とする水、化学肥料・農薬や動物が排出するげっぷや排尿から排出される温室効果ガスなどその環境負荷は日に日に高まっています。
大豆やエンドウ豆と比しても遜色ないタンパク源にもなる藻類は、陸上植物よりも高い生産性や土地利用効率を示し、かつ農耕地を使用することなく生産することが可能なため、今後の食料供給源として期待されています。また、大豆のような圧搾工程を経ることなく、そのままの形でも食用として供することが出来るため、有用なタンパク源としての活用が可能です。
2008年に米国で発表された「グリーン・ニューディール」は,気候変動や原油価格高騰危機を解決するための政策で、折からの世界金融危機(リーマンショック)などへの対応のため世界各国でこれに沿った政策が推進されています。しかし、米国はシェールガスが実用化できたことから、化石燃料への依存を再び深めてきました。
2016年のパリ協定以降、カーボンニュートラルへの風向きが一層強まり、わが国でもゼロエミッションが政策としても提言されています。
そんな中で太陽光、風力、波力・潮力、流水・潮汐、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーが注目されてきています。
自然の力で定常的もしくは反復的に補充されるエネルギーが、発電、給湯、冷暖房、輸送、燃料などのエネルギー需要全般にわたって利用され、化石燃料や原子力に頼り切った世界の産業構造そのものを変革することが期待されています。
なかでも藻類や水圏微生物を利用したバイオエネルギー生産のための基盤技術が注目されています。藻類の場合は、二酸化炭素(CO2)を固定して炭水化物を合成するため、まさに培養そのものがカーボンニュートラルへと直結します。
微細藻類によるバイオ燃料は、植物由来のバイオ燃料に比べて桁違いに生産効率が高く、またトウモロコシなどのように食品利用との競合もないため、次世代のバイオ燃料としての実用化の機運が高まっています。輸送用燃料のみならず、発電やバイオ素材などの化成品を藻類由来製品で置き換えていくことは、まさに循環型社会の創出と言えるでしょう。