自然界に存在する藻類は約数十万種と非常に多様性に富んでおり、種ごとに増殖特性や含有成分が大きく異なります。しかし、これまでに産業的に利用されている藻類はその中でもわずか約30種程度であり、自然界の藻類の多様性から考えると、多様な微細藻類資源を十分に活かしきれていません 。
藻類の中には、植物性タンパク質の原料として利用されている大豆(含有量33.8%)*1やえんどう豆(21.7%)*1を超えるたんぱく質含量を誇る(70%)*2ものや、特定の培養条件におくことによって植物性油脂の原料であるゴマ(54%) *1やアブラナ(50%)*1などの種子を超える脂質含量(70%)*2になるものも、さらにカロテノイドなどの有用物質を多く含む藻類もあります。
このような藻類は代替タンパク質としての利用や、バイオ燃料の原料としての利用などが考えられますが、多様な藻類資源の利点を最大限に活かすためには、利用目的ごとに最適な藻類を、より多くの藻類株の中からスクリーニングする必要があります。
私たちは多様な藻類ライブラリーを保有しており、この中から、色、増殖性、たんぱく質含量、脂質含量、カロテノイド含量などを指標として、目的にあった藻類株をスクリーニングしております。
これまでにも、より多くの藻類株をスクリーニングするために、プレートリーダーやセルソーターといった光学機器を用いた高効率なスクリーニング手法*3を新たに開発、藻類ライブラリーの充実を図ってきました。
藻類ライブラリーの中には自然界から分離培養された株だけでなく、重イオンビーム照射等による育種を行った株も含まれており、そういった株の中から脂質蓄積能が強化された株なども複数見出しています。
人生100年時代に突入し、人々の健康寿命への関心が高まっています。我々は藻類にはまだ知られていない機能性があると考え、ヒトの健康への寄与を目的として、藻類ライブラリーの中からヒトの健康に寄与する成分をもつ藻類のスクリーニングおよび機能性成分の同定を進めています。
*1 日本食品標準成分表2020年版 *2 E.W.Becker(2017) *3 Cytologia, 80, 475-481, (2015) DOI: https://doi.org/10.1508/cytologia.80.475